« 半田赤レンガ建物 | トップページ | 亀山宿 »

2015/10/01

浅田次郎「一路」を読んで

先月,電子書籍で浅田次郎著「一路」を読んだ。
父の死により突然道中御供頭となり,西美濃田名部(関ヶ原)から江戸まで,中山道の参勤交代を差配することになった小野寺一路の物語だ。

原作を読んでみようと思ったきっかけは,NHK・BS時代劇「一路」第5回「涙の和田峠」で,吊り橋が切れて通れず迂回したというシーンを見たことだ。自分が実際に歩いたとき,和田峠の西側には吊り橋でなければ渡れないような深い谷はなかったことを思い出したからだ。
BSでは,迂回路を進む途中で嵐となり,やむなく荷物を捨てて行くことになっている。渡辺大演ずる殿様左京大夫が,荷物を捨てろと言う場面は,迫真の演技だった。でも,原作で荷物を捨てるのは与川崩れで,和田峠を越えるのは雨ではなく吹雪の中となっている。

また,BSでは,馬籠で身売りされる村娘スワを救った一路は,スワに西美濃の国分家を頼るように言う。スワは国分家の娘・薫の身代わりとなり将監の一味にとらわれる,手に汗握る展開となっている。しかし,原作では,馬籠宿でスワから事情を聴いた殿様が,諏訪大社にスワの幸せを願うというほのぼのとした内容となっている。

BS時代劇の脚本を書いた渡邉睦月氏は,NHKのホームページで,原作の「一路」を読んで,自分が脚本の仕事を始めた頃のことを思い出し,「一路の気持ちを理解し,寄り添うことができた。」と言っている。ドラマを通して,(一路のように)前向きな気持ちで頑張ろうというメッセージだ。

浅田次郎氏の原作では,小野寺一路だけではなく,蒔坂左京大夫をはじめ,側用人の伊東喜惣次や,蔵役の佐久間勘十郎など,登場人物それぞれの心をていねいに描いている。特に,つねに家来や領民のことを思い,大胆に行動する殿様の様子が生き生きと描かれている。特に,田名部の領地・領民を一所懸命に治めると言って,加増という上様からのほうびを断ったところは,とってもかっこうよかった。

テレビドラマも原作の小説も,どちらもよいと思った。

|

« 半田赤レンガ建物 | トップページ | 亀山宿 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 浅田次郎「一路」を読んで:

« 半田赤レンガ建物 | トップページ | 亀山宿 »