生類をめぐる政治
「生類をめぐる政治 元禄のフォークロア」塚本学2017 講談社学術文庫(電子書籍版)を一か月かけて読んだ。塚本学さんは,元国立歴史民俗博物館教授で,この本の原本は1983年に刊行されているという。農具としての鉄砲,御鷹と百姓,御犬様始末,捨子・捨牛馬,生類概念と鳥獣害-- 人獣交渉史断章,あとがき からなる学術論文だ。莫大な量の参考文献をあげ,論を展開している。江戸時代の書物の文章は,とても難しい。
初めは将軍徳川綱吉を理解するために軽い気持ちで読み始めたが,とても奥が深い。綱吉政権が鉄砲改めを行ったが,鳥獣害から農作物を守るための鉄砲の所持を認めたこと。鷹狩りのために犬を飼い,犬を餌にしていたこと(驚き)。江戸では捨て子や病気の牛馬を捨てることが多く,それを禁止したこと。勉強になった。
「生類憐れみの政策は,ひとをふくむ一切の生類が権力によって保護されるべきものだという考え方と,もう一面ではひとびとに生類の憐れみを命ずるという考えの二面をもっていた。政権にとっては,生類憐れみの志をひとびとがもつことで世は安定し,人民は安らかな生活ができるというわけで・・・」(本文のまま)
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