2025/03/19

「藍を継ぐ海」を読んだ

Aiwotsuguumi0s

「藍を継ぐ海」(伊与原新 新潮社2024刊)を電子書籍版で読んだ。伊与原新さんの本は,「オオルリ流星群」に次いで2作目。
この「藍を継ぐ海」は,第172回の直木賞受賞作。「夢化けの島」「狼犬ダイアリー」「祈りの破片」「星隕つ駅逓」「藍を継ぐ海」の短編5作品が収録されている。どれも面白く,どんどん読み進むことができた。

「夢化けの島」は,萩市の見島が舞台。見島の地質を研究する主人公と萩焼の見島土を求める陶芸家の物語。主人公の研究者は,論文が評価されず科研費も得ることができないという助教という立場。大学の研究室を知る伊与原さんだからこその設定。興味深い。見島土を検索したら,萩ジオパークのHPにたどり着き,よい勉強になった。

「狼犬ダイアリー」は奈良県東吉野村で,ニホンオオカミと紀州犬の血が混じった狼犬ロマン。「祈りの破片」は,長崎で原爆が落ちた後,浦上天主堂の残がいを集めた学者の話。「星隕つ駅逓」は,北海道遠軽町に隕石が落ちたという話。そして,「藍を継ぐ海」は,徳島県の海岸でのアカウミガメ産卵の話。日本各地を取材して,ステキな作品を創りあげている。

| | コメント (0)

2025/02/16

地中海世界の歴史5/勝利を愛する人々

Chicyukaihistry05as 

地中海世界の歴史5/勝利を愛する人々 共和政ローマ(本村凌二著 講談社選書メチェ 2025年)を読んだ。95
本編はローマの建国から地中海沿岸を征服するまでの歴史が描かれている。特にカルタゴのハンニバルとの戦いについては,興味深く読むことができた。自分が少年のときに「ハンニバルの象使い」を読み,カルタゴってどんなところだろうと思ったことを思い出した。

紀元前600年頃ローマの地は,エリトリア人に支配されていたが,その後ローマ人の支配となり,前509年には王政を廃し共和政が施行されている。ローマの共和政は,元老院を構成する貴族と平民身分とで行われ,ギリシャ政治を学んで前405年には十二表法を制定している。当初は元老院中心の政治であったが,前367年には平民の政治参加が始まっている。
ローマはイタリア半島の統一後,地中海に進出しフェニキア人の国家カルタゴとの間で対立し,前264年にはサルディーニャ・コルシカ・シチリアを得ている。そして第二次ポエニ戦争では,ローマの頭領スキピオがカルタゴのハンニバルを破り,イベリア半島を属州にしている。第三次ポエニ戦争で,前146にカルタゴを滅ぼし属州アフリカ州を設置している。またこの頃マケドニアを属州とし,ローマは地中海沿岸を支配することになった。

| | コメント (0)

2025/02/13

「秋麗 東京湾臨海署安積班」を読んで

Konno_bin_syurei01s

電子書籍で「秋麗 東京湾臨海署安積班」(今野敏 ハルキ文庫 角川春樹事務所 2022刊)を読んだ。読み始めは半年ぐらい前だけど,待ち時間にスマホで少しずつ読んできたのでこんなにかかってしまった。安積班の刑事物はテレビドラマでよく見たことがあるので,興味があって読んでみた。

釣り仲間三人のうち一人が海に浮かんでいた。三人は詐欺事件に関係していて,詐欺の被害に遭った男が手下を使って殺害したのではないかとの疑惑が浮かぶ。湾岸署の安積と所轄の刑事が連携して事件解決をはかる。この小説もドラマ化されるのかな。

| | コメント (0)

2025/02/01

「婚活マエストロ」を読んだ。

Konkatsumaestro1s

「婚活マエストロ」(宮島未奈著 文藝春秋2024刊)を読んだ。宮島さんの作品を読んだのは,成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」に続き3作目。いや,面白い。

40歳独身の猪名川健人はフリーのWEBライターだが,婚活パーティーを主催する会社を取材することになる。初めは体験で参加していたが,次第に婚活パーティーを手伝うようになる。そして,その婚活パーティーの司会をする女性の魅力に惹かれるようになる。93

| | コメント (0)

2025/01/25

「オオルリ流星群」を読んだ。

Ohruriryuseigun01s

「オオルリ流星群」(伊与原新 角川文庫2024刊)を読んだ。伊与原新さんは,地球惑星科学を専攻した理系の方。天文の知識を生かした小説を多数執筆されている。「藍を継ぐ海」が直木賞を受賞している。

「オオルリ流星群」は,高校時代にオオルリの空き缶タペストリーをつくった若者たちが,27年を経て再結集し丹沢山中にミニ天文台をつくりあげたという話。国立天文台をやめて,ミニ天文台をつくろうとする慧子(スイ子)に協力する,久志と千佳の思いを中心に話が展開する。45歳になって,人生をやり直そうとするそれぞれの人間群像が描かれていて,前向きになれる。

途中,天文台のドームを豊川市の高校から譲り受けるシーンが出てくる。たぶん豊川高校だろう。身近な地名が出てくるとうれしい。

 

| | コメント (0)

2025/01/06

「女王の時代 -野上豊一郎の文学より-」を読んで

Joounojidai3as

「女王の時代 -野上豊一郎の文学より-」(稲垣信子著:豊川堂2018年刊)を読んだ。昨年から「地中海世界の歴史」を読んでいるが,古代のギリシャ・エジプト・マケドニアなどの歴史にふれることができてきた。そういえば以前購入し少しだけ読んで,そのままにしておいたこの本のことを思い出して,読んでみた。野上豊一郎の「クレオパトラ エジプトの王たちと女王たち」(1941年)と「シェバの女王」(1947年)の2冊の本を読んだ解説書となっている。野上豊一郎は,1938年イギリスとの交換教授でイギリスへ向かう途中にエジプトを旅行し,古代エジプトの歴史について取材したという。

「クレオパトラ」には,王イクナットン,王ラメセス二世,女王ハトシェプスト,女王クレオパトラについて書かれている。
「シェバの女王」は,シェバの女王,王ソロモンの智恵,王ソロモンの後宮,パウロと奴隷,十二使徒,ゲッセマネの小童,という構成である。イエスと十二使徒のことも書かれており,キリスト教の布教のことも書かれていた。

読後にネットで調べると,クレオパトラは,アレクサンドロス大王が病死した後,エジプトにできたプトレマイオス王朝の女王であること。シェバという国はエチオピアか南イエメンにあり,シェバの女王は,イスラエル王ソロモンに会いに出かけたことなどがわかった。

そういえば,著者の稲垣信子さんの夫稲垣瑞雄さんは豊橋出身で,以前「朱光院」という本を読んだことがあった。

| | コメント (0)

2024/12/30

地中海世界の歴史4/辺境の王朝と英雄

Chicyukaihistry04_2as

地中海世界の歴史4/辺境の王朝と英雄 ヘレニズム文明(本村凌二著 講談社選書メチェ 2024年)を読んだ。
本編は主にBC300年前後のヘレニズム文明についての記述が中心。アレキサンドロス大王の東征の歴史がくわしく書かれ,興味深く読むことができた。

ギリシャの北にあるマケドニアは,アレクサンドロス大王の東征で有名だが,その礎は父王のフィリポス2世によってもたらされた。フィリポス2世は,マケドニア貴族からなる騎兵軍を組織し,軍を改革した。普通の槍の長さは2.5mほどだが,マケドニアの歩兵は長さ5.5mの長槍を持っていたという。フィリポス2世のマケドニア軍は,ギリシャを圧倒する。しかしフィリポス2世は,この世を去ることになった。

次のアレクサンドロスは,ペルシャ征服に乗りだした。アレクサンドロスは,敵の軍勢を研究しその勢力に応じた戦い方をした。戦いに勝った後,自軍の兵には十分な休養を与え,敗軍の将たちを丁重に扱う立派な大王であった。はるか東方インダス川まで進軍したのだからすごい。このマケドニア軍がもたらしたギリシャの文化が,ペルシャや西アジアの地に伝わりヘレニズム文化が生まれたという。筆者の本村氏は,ヘレニズム文明と言っている。

 

| | コメント (0)

2024/12/19

「王国への道-山田長政ー」を読んだ

 

Oukokuhenomichi01as

「王国への道-山田長政ー」(遠藤周作 新潮社文庫1984年刊 【1981平凡社】)を読んだ。朱印船貿易が盛んなときに日本町がフィリピンやタイ・カンボジアがつくられたことに興味を持ったのが読むきっかけ。
慶長19年,長崎を追放されマカオに向かう切支丹の船があった。この船に同乗したのが,切支丹の西ロマノ(後のペドロ岐部)と,主人公藤蔵(後の山田長政)であった。藤蔵は切支丹ではないが,マカオで中国人商人と会い,タイのアユタヤの日本町に行き貿易を行うことになる。そして,アウタヤ王宮の日本人傭兵の頭領として活躍する。しかし王宮内の権力争いに巻き込まれ,最後は毒殺される。
もう一人のペドロ岐部は,マカオでは神父になれないことが分かり,船でインドのゴアに渡った。そこから陸路ペルシャを経てエルサレムに入り,ローマについた。ローマで神父になり,日本に戻って迫害された切支丹を励ましたが,密告により逮捕,拷問され死去した。
この二人は歴史上の人物だが,アユタヤでの長政の活躍と二人の交流はなどは遠藤周作の創作で,楽しめた。遠藤周作の作品は,「狐狸庵」先生とよばれた時期の随筆を,学生時代に読んで以来。

| | コメント (0)

2024/11/30

「成瀬は信じた道をいく」を読んだ

Narusehawagamichi1s

「成瀬は信じた道をいく」(宮島未奈著 2024年 新潮社刊)を読んだ。本屋大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」の続編。前作は,電子書籍で読んだが,今回は単行本で。ほぼ一日で読んだ。とにかく面白い。
主人公の成瀬あかりさんは,父親の心配をよそに,京都大学にゆうゆう合格。近所のスーパーのレジをやりながら,びわ湖観光大使をつとめる。2025年の年末には突如家を出て,親友の島崎あかりさんや観光大使の相棒篠原さんらに行方を探させる。挙げ句の果ては紅白歌合戦のけん玉に参加し,中学時代の「紅白に出る」という目標を達成するとオチまでついた。続々編も出るのが待たれる。

| | コメント (0)

2024/11/21

地中海世界の歴史3/白熱する人間たちの都市

Chicyukaihistry03as

地中海世界の歴史3/沈黙する神々の帝国 エーゲ海とギリシャの文明(本村凌二著 講談社選書メチェ 2024年)を読んだ。前編の地中海世界の歴史2/沈黙する神々の帝国 を読んでから,実に3か月もかかってしまった。
本編は主にBC500年からBC300年にかけての,ギリシャの古典期に焦点を当てている。読むのにあまりにも時間がかかってしまったので,前の方は忘れてしまった。

とにかくアテナイ(アテネ)とスパルタのポリスの違いがくわしく書かれていた。アテナイはギリシャの中心的ポリスで,直接民主制をとっていた。市民は戦争に行く義務がある。その市民は,何人もの奴隷を持ち,奴隷に働かせていた。奴隷は,アテナイが戦いで勝ち,負けた相手の国から連れてきた者もいる。奴隷から生まれた者は,奴隷の身分のまま。アテナイの繁栄は,奴隷制の上に成り立ち,市民は奴隷制を当然な者としていたということには驚かされた。女性は家から外へ出ず,買い物などは奴隷に行かせていたという。男女差別の世界だ。
一方,スパルタは,子供を幼いうちから軍事施設のような学校で鍛錬し,戦いのために育て上げていたという。これがスパルタ教育か。スパルタは,アテナイとの戦いに勝ったが,人口が少なくやがて衰退していく。アテナイには,パルテノン神殿を始め有名な遺跡が残っているのに対し,かつてのスパルタの土地は,今ではほとんど何も残っていないそうだ。

哲学者,ソクラテス,プラトン,アリストテレスのこともくわしく書かれていて,勉強になった。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧