2025/06/17

「DTOPIA(デートピア)」を読んだ/難しい。

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第172回芥川賞受賞作「DTOPIA(デートピア)」(安堂ホセ著 2014年11月 河出書房新社刊)を電子書籍で読んだ。実に難しかった。97
恋愛リアリティーショー・デートピアが,フランス領ポリネシアのボラ・ボラ島で開催された。白人のミスユニバースに選ばれるため,世界から10人の男が参加する。
その一人Mr.東京の「キース」と,語り手の「モモ」の関係で話は展開する。かつて「モモ」は性別違和の兆候で,「キース」によって施術を受けている。「モモ」は,日本人の父とポリネシア系フランス人の母に生まれている。
この話ではトランスジェンダー,人種差別,核実験,植民地支配など様々な問題を取り上げている。ポリネシアでは,フランスが核実験を行った。また,植民地ポリネシアにフランスの兵士が残した足跡についても語られている。

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2025/06/04

「カフネ」を読んだ。

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先月,カフネ(阿部暁子著 講談社 2024年刊)を読んだ。2025年の本屋大賞受賞作。96
主人公薫子は,亡くなった弟春彦が遺言で残した通り,遺産の一部を相続するよう春彦の婚約者小野寺せつなに伝える。せつなは,拒否する。
薫子は,夫公隆から離婚されすさんだ生活をしていた。そんな時,倒れた薫子にせつながおいしい食事を用意してくれる。
そして,せつなから家事代行サービス「カフネ」を手伝ってほしいと依頼される。「カフネ」の利用者は,様々な事情を抱えているが,せつなの料理に救われる。

引き込まれる内容で,すぐに読むことができた。とてもおもしろかった。

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2025/05/14

地中海世界の歴史6/「われらが海」の覇権

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地中海世界の歴史6/「われらが海」の覇権(本村凌二著 講談社選書メチェ 2025年)を読んだ。95
本編はカルタゴを倒して地中海の覇者となった共和政ローマが,「運命の寵児カエサル」の時代を経て,その後継者オクタウィアヌスがアウグストゥスの称号を得て帝政へ移行。そして,暴君ネロまでの時代をえがいている。そして,ヴェスヴィオ火山の噴火による都市ポンペイの悲劇が起こる。世界史をきちんと学んでこなかった自分にとっては,新鮮な知識となった。でも,たくさんの王や貴族・人物が出てきて,まったくせいりがつかない。

カエサルは紀元前100年の生まれ。カエサルはポンペイウスと「三頭政治」を行うが,やがて対立しエジプトに逃れたポンペイウスを追いエジプトに渡る。エジプトでクレオパトラに出会う。カエサルはローマにもどり独裁者となるが,共和政を擁護する元老院議員派の反感を買い,前44年にブルトゥスに暗殺される。カエサルの養子オクタウィアヌスは,政敵を倒しアウグストゥスの称号を受け,前27年にローマ帝国が成立する。
古代ローマの歴史は,ローマの建国叙事詩などに記述されている。多くの詩人も出ている。また,ローマ市内の多くの建造物に碑文が残されている。

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2025/04/23

蒲生邸事件をよんだ。

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「蒲生邸事件」(宮部みゆき著 文春文庫 2000年刊)を読んだ。94
大学受験生孝史が予備校受験のため宿泊していたホテルが火事になり,時間旅行者平田に助け出される。助け出されたのはそのホテルが建っていた旧蒲生邸で,二二六事件が起こった1936(昭和11)年2月11日だった。二二六事件が起こった2月11日,退役陸軍大将の蒲生憲之が自決する。ただ自決ならば側にあるはずの拳銃が見つからず,誰かが殺したのではないかという疑問も残る。
平田はこの蒲生邸の下働きとして雇われていて,やけどを負った孝史は平田の甥として紹介され,女中のふきの世話になる。

1945(昭和20)年5月,空襲よる火事で蒲生邸が延焼したことを,タイムトリップで見た孝史は,ふきに一緒に出ようと言うが,ふきは断った。孝史とふきは,ふきの誕生日4月20日正午に浅草雷門で逢う約束をして,孝史は現代に帰った。そして,4月20日に現れた女性はふきの孫であった。ふきは6年前にがんで亡くなっていて,孝史に手紙を残していた。

文庫本で680ページにも及ぶ長編で,とても読み応えがあった。この作品は,1996年の日本SF大賞を受賞している。それにしても,あとがきで「蒲生憲之陸軍大将はまったく架空の人物」と記述されているのにはビックリ! それを読むまで,蒲生邸事件は本当にあったと思っていた。

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2025/03/19

「藍を継ぐ海」を読んだ

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「藍を継ぐ海」(伊与原新 新潮社2024刊)を電子書籍版で読んだ。伊与原新さんの本は,「オオルリ流星群」に次いで2作目。
この「藍を継ぐ海」は,第172回の直木賞受賞作。「夢化けの島」「狼犬ダイアリー」「祈りの破片」「星隕つ駅逓」「藍を継ぐ海」の短編5作品が収録されている。どれも面白く,どんどん読み進むことができた。93

「夢化けの島」は,萩市の見島が舞台。見島の地質を研究する主人公と萩焼の見島土を求める陶芸家の物語。主人公の研究者は,論文が評価されず科研費も得ることができないという助教という立場。大学の研究室を知る伊与原さんだからこその設定。興味深い。見島土を検索したら,萩ジオパークのHPにたどり着き,よい勉強になった。

「狼犬ダイアリー」は奈良県東吉野村で,ニホンオオカミと紀州犬の血が混じった狼犬ロマン。「祈りの破片」は,長崎で原爆が落ちた後,浦上天主堂の残がいを集めた学者の話。「星隕つ駅逓」は,北海道遠軽町に隕石が落ちたという話。そして,「藍を継ぐ海」は,徳島県の海岸でのアカウミガメ産卵の話。日本各地を取材して,ステキな作品を創りあげている。

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2025/02/16

地中海世界の歴史5/勝利を愛する人々

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地中海世界の歴史5/勝利を愛する人々 共和政ローマ(本村凌二著 講談社選書メチェ 2025年)を読んだ。95
本編はローマの建国から地中海沿岸を征服するまでの歴史が描かれている。特にカルタゴのハンニバルとの戦いについては,興味深く読むことができた。自分が少年のときに「ハンニバルの象使い」を読み,カルタゴってどんなところだろうと思ったことを思い出した。

紀元前600年頃ローマの地は,エリトリア人に支配されていたが,その後ローマ人の支配となり,前509年には王政を廃し共和政が施行されている。ローマの共和政は,元老院を構成する貴族と平民身分とで行われ,ギリシャ政治を学んで前405年には十二表法を制定している。当初は元老院中心の政治であったが,前367年には平民の政治参加が始まっている。
ローマはイタリア半島の統一後,地中海に進出しフェニキア人の国家カルタゴとの間で対立し,前264年にはサルディーニャ・コルシカ・シチリアを得ている。そして第二次ポエニ戦争では,ローマの頭領スキピオがカルタゴのハンニバルを破り,イベリア半島を属州にしている。第三次ポエニ戦争で,前146にカルタゴを滅ぼし属州アフリカ州を設置している。またこの頃マケドニアを属州とし,ローマは地中海沿岸を支配することになった。

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2025/02/13

「秋麗 東京湾臨海署安積班」を読んで

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電子書籍で「秋麗 東京湾臨海署安積班」(今野敏 ハルキ文庫 角川春樹事務所 2022刊)を読んだ。読み始めは半年ぐらい前だけど,待ち時間にスマホで少しずつ読んできたのでこんなにかかってしまった。安積班の刑事物はテレビドラマでよく見たことがあるので,興味があって読んでみた。

釣り仲間三人のうち一人が海に浮かんでいた。三人は詐欺事件に関係していて,詐欺の被害に遭った男が手下を使って殺害したのではないかとの疑惑が浮かぶ。湾岸署の安積と所轄の刑事が連携して事件解決をはかる。この小説もドラマ化されるのかな。

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2025/02/01

「婚活マエストロ」を読んだ。

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「婚活マエストロ」(宮島未奈著 文藝春秋2024刊)を読んだ。宮島さんの作品を読んだのは,成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」に続き3作目。いや,面白い。

40歳独身の猪名川健人はフリーのWEBライターだが,婚活パーティーを主催する会社を取材することになる。初めは体験で参加していたが,次第に婚活パーティーを手伝うようになる。そして,その婚活パーティーの司会をする女性の魅力に惹かれるようになる。93

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2025/01/25

「オオルリ流星群」を読んだ。

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「オオルリ流星群」(伊与原新 角川文庫2024刊)を読んだ。伊与原新さんは,地球惑星科学を専攻した理系の方。天文の知識を生かした小説を多数執筆されている。「藍を継ぐ海」が直木賞を受賞している。

「オオルリ流星群」は,高校時代にオオルリの空き缶タペストリーをつくった若者たちが,27年を経て再結集し丹沢山中にミニ天文台をつくりあげたという話。国立天文台をやめて,ミニ天文台をつくろうとする慧子(スイ子)に協力する,久志と千佳の思いを中心に話が展開する。45歳になって,人生をやり直そうとするそれぞれの人間群像が描かれていて,前向きになれる。

途中,天文台のドームを豊川市の高校から譲り受けるシーンが出てくる。たぶん豊川高校だろう。身近な地名が出てくるとうれしい。

 

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2025/01/06

「女王の時代 -野上豊一郎の文学より-」を読んで

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「女王の時代 -野上豊一郎の文学より-」(稲垣信子著:豊川堂2018年刊)を読んだ。昨年から「地中海世界の歴史」を読んでいるが,古代のギリシャ・エジプト・マケドニアなどの歴史にふれることができてきた。そういえば以前購入し少しだけ読んで,そのままにしておいたこの本のことを思い出して,読んでみた。野上豊一郎の「クレオパトラ エジプトの王たちと女王たち」(1941年)と「シェバの女王」(1947年)の2冊の本を読んだ解説書となっている。野上豊一郎は,1938年イギリスとの交換教授でイギリスへ向かう途中にエジプトを旅行し,古代エジプトの歴史について取材したという。

「クレオパトラ」には,王イクナットン,王ラメセス二世,女王ハトシェプスト,女王クレオパトラについて書かれている。
「シェバの女王」は,シェバの女王,王ソロモンの智恵,王ソロモンの後宮,パウロと奴隷,十二使徒,ゲッセマネの小童,という構成である。イエスと十二使徒のことも書かれており,キリスト教の布教のことも書かれていた。

読後にネットで調べると,クレオパトラは,アレクサンドロス大王が病死した後,エジプトにできたプトレマイオス王朝の女王であること。シェバという国はエチオピアか南イエメンにあり,シェバの女王は,イスラエル王ソロモンに会いに出かけたことなどがわかった。

そういえば,著者の稲垣信子さんの夫稲垣瑞雄さんは豊橋出身で,以前「朱光院」という本を読んだことがあった。

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