2025/01/06

「女王の時代 -野上豊一郎の文学より-」を読んで

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「女王の時代 -野上豊一郎の文学より-」(稲垣信子著:豊川堂2018年刊)を読んだ。昨年から「地中海世界の歴史」を読んでいるが,古代のギリシャ・エジプト・マケドニアなどの歴史にふれることができてきた。そういえば以前購入し少しだけ読んで,そのままにしておいたこの本のことを思い出して,読んでみた。野上豊一郎の「クレオパトラ エジプトの王たちと女王たち」(1941年)と「シェバの女王」(1947年)の2冊の本を読んだ解説書となっている。野上豊一郎は,1938年イギリスとの交換教授でイギリスへ向かう途中にエジプトを旅行し,古代エジプトの歴史について取材したという。

「クレオパトラ」には,王イクナットン,王ラメセス二世,女王ハトシェプスト,女王クレオパトラについて書かれている。
「シェバの女王」は,シェバの女王,王ソロモンの智恵,王ソロモンの後宮,パウロと奴隷,十二使徒,ゲッセマネの小童,という構成である。イエスと十二使徒のことも書かれており,キリスト教の布教のことも書かれていた。

読後にネットで調べると,クレオパトラは,アレクサンドロス大王が病死した後,エジプトにできたプトレマイオス王朝の女王であること。シェバという国はエチオピアか南イエメンにあり,シェバの女王は,イスラエル王ソロモンに会いに出かけたことなどがわかった。

そういえば,著者の稲垣信子さんの夫稲垣瑞雄さんは豊橋出身で,以前「朱光院」という本を読んだことがあった。

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2024/12/30

地中海世界の歴史4/辺境の王朝と英雄

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地中海世界の歴史4/辺境の王朝と英雄 ヘレニズム文明(本村凌二著 講談社選書メチェ 2024年)を読んだ。
本編は主にBC300年前後のヘレニズム文明についての記述が中心。アレキサンドロス大王の東征の歴史がくわしく書かれ,興味深く読むことができた。

ギリシャの北にあるマケドニアは,アレクサンドロス大王の東征で有名だが,その礎は父王のフィリポス2世によってもたらされた。フィリポス2世は,マケドニア貴族からなる騎兵軍を組織し,軍を改革した。普通の槍の長さは2.5mほどだが,マケドニアの歩兵は長さ5.5mの長槍を持っていたという。フィリポス2世のマケドニア軍は,ギリシャを圧倒する。しかしフィリポス2世は,この世を去ることになった。

次のアレクサンドロスは,ペルシャ征服に乗りだした。アレクサンドロスは,敵の軍勢を研究しその勢力に応じた戦い方をした。戦いに勝った後,自軍の兵には十分な休養を与え,敗軍の将たちを丁重に扱う立派な大王であった。はるか東方インダス川まで進軍したのだからすごい。このマケドニア軍がもたらしたギリシャの文化が,ペルシャや西アジアの地に伝わりヘレニズム文化が生まれたという。筆者の本村氏は,ヘレニズム文明と言っている。

 

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2024/12/24

資料展「蔦屋重三郎と東三河の読書熱」

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豊橋市中央図書館に行き,資料展「蔦屋重三郎と東三河の読書熱」を観てきた。蔦屋重三郎は,2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」から蔦重栄華乃夢噺~」の主人公。
蔦屋重三郎は,1750(寛延3)年,江戸吉原に生まれる。1757(宝暦7)年,新吉原蔦屋の養子となり,1772(安永元)年に書店耕書堂を開いている。この年田沼意次が老中となり,経済が活発となり,大衆文化が発展したころのこと。この資料展のパンフレットには「斬新な黄表紙,狂歌絵本,浮世絵を次々と出版して江戸を代表する版元となっていく様子を紹介」とある。

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資料展では,江戸時代の出版の概要も紹介している。
江戸時代の版元須原屋市兵衛は,杉田玄白の『解体新書』【1774(安永3)年】を手がけている。これは,羽田八幡宮文庫旧蔵資料(愛知県文化財)豊橋市中央図書館蔵。羽田八幡宮文庫は,羽田八幡宮の羽田野敬雄が中心となって設立した文庫だが,この文庫に「解体新書」があったなんて驚き。

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2024/12/19

「王国への道-山田長政ー」を読んだ

 

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「王国への道-山田長政ー」(遠藤周作 新潮社文庫1984年刊 【1981平凡社】)を読んだ。朱印船貿易が盛んなときに日本町がフィリピンやタイ・カンボジアがつくられたことに興味を持ったのが読むきっかけ。
慶長19年,長崎を追放されマカオに向かう切支丹の船があった。この船に同乗したのが,切支丹の西ロマノ(後のペドロ岐部)と,主人公藤蔵(後の山田長政)であった。藤蔵は切支丹ではないが,マカオで中国人商人と会い,タイのアユタヤの日本町に行き貿易を行うことになる。そして,アウタヤ王宮の日本人傭兵の頭領として活躍する。しかし王宮内の権力争いに巻き込まれ,最後は毒殺される。
もう一人のペドロ岐部は,マカオでは神父になれないことが分かり,船でインドのゴアに渡った。そこから陸路ペルシャを経てエルサレムに入り,ローマについた。ローマで神父になり,日本に戻って迫害された切支丹を励ましたが,密告により逮捕,拷問され死去した。
この二人は歴史上の人物だが,アユタヤでの長政の活躍と二人の交流はなどは遠藤周作の創作で,楽しめた。遠藤周作の作品は,「狐狸庵」先生とよばれた時期の随筆を,学生時代に読んで以来。

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2024/11/23

伊勢東街道二日目/養老から美濃山崎まで

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伊勢東街道二日目。養老鉄道養老駅から美濃山崎駅までの13.5kmを約4時間で歩いた。前回と同じでYさんとの二人旅。道順でだいぶ助けられながら何とか山崎駅まで歩けた。前回の道は米原と濃州三湊(養老町)を結ぶ九里半街道と重なっていたが,船着灯籠群二か所を見学。この写真は,一色地区船見の灯籠。近くに津屋川が流れる。

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美濃津屋駅近くの本慶寺は津屋城跡。海津市史跡。
海津市HPには,「津屋城には、関ヶ原合戦まで高木八郎左衛門が居城していたが、西軍に従ったために没落し、廃城となった。現在、本慶寺境内地に主郭部の土塁・堀などが残り、旧態を推定することができる。」とある。

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2024/11/21

地中海世界の歴史3/白熱する人間たちの都市

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地中海世界の歴史3/沈黙する神々の帝国 エーゲ海とギリシャの文明(本村凌二著 講談社選書メチェ 2024年)を読んだ。前編の地中海世界の歴史2/沈黙する神々の帝国 を読んでから,実に3か月もかかってしまった。
本編は主にBC500年からBC300年にかけての,ギリシャの古典期に焦点を当てている。読むのにあまりにも時間がかかってしまったので,前の方は忘れてしまった。

とにかくアテナイ(アテネ)とスパルタのポリスの違いがくわしく書かれていた。アテナイはギリシャの中心的ポリスで,直接民主制をとっていた。市民は戦争に行く義務がある。その市民は,何人もの奴隷を持ち,奴隷に働かせていた。奴隷は,アテナイが戦いで勝ち,負けた相手の国から連れてきた者もいる。奴隷から生まれた者は,奴隷の身分のまま。アテナイの繁栄は,奴隷制の上に成り立ち,市民は奴隷制を当然な者としていたということには驚かされた。女性は家から外へ出ず,買い物などは奴隷に行かせていたという。男女差別の世界だ。
一方,スパルタは,子供を幼いうちから軍事施設のような学校で鍛錬し,戦いのために育て上げていたという。これがスパルタ教育か。スパルタは,アテナイとの戦いに勝ったが,人口が少なくやがて衰退していく。アテナイには,パルテノン神殿を始め有名な遺跡が残っているのに対し,かつてのスパルタの土地は,今ではほとんど何も残っていないそうだ。

哲学者,ソクラテス,プラトン,アリストテレスのこともくわしく書かれていて,勉強になった。

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2024/10/18

近江八幡再訪

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先日,近江八幡へ行った。約9年ぶり。前回は,朝鮮街道歩きで立ち寄った。今回は,バームクーヘンの「ラ コリーナ近江八幡」と八幡山のロープウエイ・日牟禮八幡宮がおめあて。八幡堀や伝建地区も再訪でき楽しかった。

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日牟禮八幡宮は,近江八幡の地名の由来となった神社。八幡宮参拝後,八幡山山頂までロープウェイで登る。山頂にある八幡山城は,安土城落城後に,豊臣秀吉・豊臣秀次が築城し,秀次が城主となった。安土城の建物と城下町がこの地に移され,近江八幡は発展した。西の丸からは琵琶湖がきれいに見えた。

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2024/08/21

地中海世界の歴史2/沈黙する神々の帝国

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地中海世界の歴史2/沈黙する神々の帝国 アッシリアとペルシア(本村凌二著 講談社選書メチェ 2024年)を読んだ。一か月前に,地中海世界の歴史1/神々のささやく世界を読み,その続編。

前編・神々のささやきでは,BC5000からBC1000年ごろまでの,メソポタミア・エジプトの歴史がくわしく綴られている。そのころの人々には,「神々の声がささやく」とか「神々の姿が現れる」ということが,現実のごとく真に迫って感じられることだったという。
本編・沈黙する神々の帝国では,BC1000年ごろから,人々はそのような神々の「声」や「姿」を実感できなくなった。地中海世界では,「もはや『神々の沈黙』とでもいえるような現象が各地で見られるようになったという。また本書では,人類最大の発明として,アルファベットの発明,一神教・貨幣の誕生を,くわしく説明している。そして,BC1000からBC300年ごろに中東で興隆したアッシリア帝国とペルシア帝国について述べている。さらに,ユダヤ教の成立やギリシアの哲学者ソクラテス・プラトン,インドの仏陀,中国の孔子・孟子についても記述されていた。

この本も,かなり読み応えがあり,数行読んではうつらうつらという状況だったが,なんとか読み終えた。不勉強で,地中海世界については分らないことばかりだったが,少しずつ分ってきた。例えば中学校歴史教科書に出てくるアーリア人とは,BC2000年紀にカスピ海の北東方面からインドやイラン高原に移住してきた印欧語族で,インドでは先住民を征服しカースト制度を作り上げたが,イラン高原では先住民と同化していったという。

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2024/07/14

地中海世界の歴史1/神々のささやく世界

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地中海世界の歴史1/神々のささやく世界 オリエントの文明(本村凌二著 講談社選書メチェ 2024年)を読んだ。
歴史の学習のはじめに必ず出てくるのが,古代の四大文明。ピラミッドで有名なナイル川流域のエジプト文明。ティグリス・ユーフラテス川流域のメソポタミア文明。大河の流域に発生した文明と何となく分ってはいても,詳しくは知らない。そんななかで,本村凌二氏の「地中海世界の歴史」シリーズの発刊を知った。「地中海世界」とは,文明発祥の地メソポタミアからローマ帝国の崩壊まで,多彩な文明が興亡した4000年にわたる歴史世界のことだそうだ。

メソポタミアの地にはシュメール人によるウル王朝ができ,ジックラトと呼ばれる神殿が作られたことや,バビロンのハンムラビ法典につながる最古の法典が作られていたことなどがくわしく述べられている。そして,ナイル川流域では,BC3000年頃のエジプト初期王朝時代から,BC1000年の第24王朝までの歴史が述べられている。ギザのピラミッドやツタンカアメン,ラメセス2世なども興味深い。

オリエントは,大きくいうとメソポタミアとエジプトという「肥沃な三日月地帯」と,その二つの地域にはさまれた古代シリアの二つに分けられる。その古代シリアで勢力を伸ばした民族に,ヘブライの民(ユダヤ人)とフェニキア人がいた。ヘブライの民は,エジプトに捕らわれ奴隷になっていたが,指導者モーゼのもと,「約束の地」カナンへ移り住み,やがてユダヤ教という一神教を生み出した。また,現在のイスラエルにあたる地域の沿岸部には海の民フェニキア人が海洋貿易で繁栄し,エジプトのヒエログリフを簡略化してアルファベットを開発したという。

読み応えのあるすごい本だった。私には難解で,1冊を読むのに一か月もかかった。全8巻だが,興味深い本だった。

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2024/07/05

戸定邸(旧徳川家住宅松戸戸定邸)へ行ってきた。

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6月29日(土)に,松戸市の戸定邸(旧徳川家住宅松戸戸定邸)に行ってきた。戸定亭は,水戸徳川家の当主徳川昭武が邸宅を構えたところ。徳川昭武は,15代将軍徳川慶喜の弟で,慶喜の名代としてパリ万博へ行ったことで知られる。幻の16代将軍と言われる。
このパリ万博使節団には,渋沢栄一も同行している。ちょうど渋沢栄一の新一万円札が発行されたところ。

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戸定亭見学の前に,松戸市戸定歴史館を見学した。ちょうど,「戸定だよりー絵葉書から見る暮らし」という展示会を開催中だった。徳川昭武やその親族が送った絵はがきが多数展示されていた。昭武は写真が趣味で,写した写真を絵はがきにして送っていたという。ずいぶん筆まめ。歴史館では,もっと徳川昭武の人生や業績についての展示が見たかった。
写真は,歴史公園から見た戸定亭。

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